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  11 ,2021

プロフィール

現在、作家、ジャーナリスト、エッセイスト、ウイスキー評論家、日本初のウイスキー専門誌『Whisky Galore』(2017年2月創刊)の編集長として活躍中。2001年3月スコッチ文化研究所(現ウイスキー文化研究所)を設立。

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「オオタニのMVPとペルノの峨眉山蒸留所」
 大リーグでショウヘイ大谷がMVP。それも30人の記者全員が1位に推す満票でMVPである。ホームランの時ほどではないが、久しぶりに朝から気分が良い一日である。

 昨日の18日はTWSCのオンラインテイスティングで、ジャパニーズクラフトジン7種をテイスティング。プラスして受講者に送られた5本もテイスティングしたので、計12アイテムをやったことになる。その前にウイ文研のトライアルパック、「サントリー基本のき」で、5本のテイスティングと、ミニ解説をやっていたので、1日で17本。合計3時間近く話したことになる。ほとんど体力勝負、デスマッチであるが、とりあえずTWSC、そしてトライアルパック第3弾、15アイテムを終了したことになる。

 山形から帰って、そんなことに忙殺されていたが今日19日はWBBCの2時間の収録・ライブ放送があるので、その準備にも時間を取られていた。バーチャル蒸留所ツアーは、いよいよスぺイサイドで、今回はリベットにマッカラン、フィディックなど、有名どころを中心に回る予定だ。なかでもダフタウンのフィディック、バルヴェニー、モートラックは必見だ。特にモートラックは一切公開していないので、内部の様子を知ることは不可能。そういう意味では貴重な映像だ。

 10大ニュースは2週間くらい前から、あれこれ考え、ほぼ今週月曜には決めていたが、そこへ突如飛び込んできたのが、ペルノリカールの中国の蒸留所のニュースだった。ディアジオが雲南省の大理ペー族自治区に蒸留所を建設するとアナウンスしたばかりで、その時にペルノはどうしたのだろうかと、このブログにも書いたが、それを受けてというわけではないのだろうが、一昨日、突如ペルノか四川省の蒸留所が竣工し、すでに蒸留を初めているとアナウンスした。

 これは2年半前に報じられていたニュースで、場所は四川省の峨眉山(がびさん)。蒸留所名は今回公表されたが、チュワン蒸留所。つまり〝川蒸留所″、リバーディスティラリーである。もちろん四川省から取られている。ディアジオの雲南蒸留所が85億円のプロジェクトであるのに対し、ペルノのこのリバー蒸留所はその倍の170億円の巨大プロジェクトだ。造るのは中国初となる本格モルトウイスキー。まだ生産の細かいスペックは発表になっていないが、観光とも合体した一大プロジェクトであることは間違いない。

 峨眉山は世界遺産にも登録されている中国三大霊山の1つで、さらに四大仏教名山の1つでもある。標高は約3,100メートルで、連なる峰々が女性の優美な眉のように見えることから、この名が付いたという。かつての蜀の国で三国志ファンにはお馴染みの場所。大学の時に中国語と漢詩をとっていた私にとって、懐かしい場所でもある。行ったことはないが、峨眉山は詩聖・酒仙ともいわれる李白の生地でもある。その李白が25歳の時に詠んだ句が、有名な『峨眉山月の詩』で、50年近く前の大学の授業でも習っていた。李白が得意とする絶句で、これは七言絶句。船に乗って故郷をあとにした李白が、峨眉山に昇る月と、山峡の風景、そして河を詠ったもので、三峡に向かうと自ら詠んでいる。三峡は有名な揚子江(長江)の要衝で、ここを下れば、やがて重慶、そして中原に至る。

 李白はのちに長安の都で玄宗皇帝にも仕えたが、この時に杜甫や、そして日本の阿部仲麻呂とも交友を持っている。酒仙といわれるのは、無類の酒好きで、「酒一斗、詩百篇」といわれたからでもある。故郷の四川省を遠く離れて、生涯を漂白した李白には古里を詠った詩も多いが、私の好きな一句が「静夜思」である。「床前 月光を看る 疑うらくは是 地上の霜かと…」。これは五言絶句で、その後に「頭を挙げて山月を望み 頭を低れて故郷を思う」と続く。これほど見事な望郷の詩もないだろう。

 さて、ペルノの峨眉山の蒸留所、そしてディアジオの雲南の蒸留所。非常に楽しみな蒸留所が中国に誕生した(する)ことになる。ウイスキーをやり始めて今年で33年。まさか、こんな時代がくるとは…。




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「山形の遊佐蒸溜所で編集長インタビュー」
 11月も半分が過ぎてしまったが、相変わらずのスケジュールが続いていて、14日の日曜日も、18日(木)に行うTWSCのオンラインセミナーのためのテイスティング。今回はジャパニーズのクラフトジンに絞ってやるため、計7種のテイスティングをやってしまう。ジンは久しぶりだったが、ジャパニーズはそれぞれに個性があり面白い。なかでもTWSC2021で最高金賞をとった秋田杉ジンと、熊本のジンジンジンは素晴らしい。どちらもバランスが取れていて、TWSCのジャッジが高得点を付けた理由がよく分かる。ブラインドでやっても、その評価が高かったのは納得だ。

 ただし、やりながらジャパニーズクラフトジンには、ウイスキーと同じように、ある基準、定義が必要なのではないかと考えるようになった。EUではコンパウンドジン、ディスティルドジン、ロンドンジンの3種があり、その定義、違いは明確だが、日本のジンにはそれがない。別にEUが定めるベーススピリッツの要件は満たす必要はないし、3つのカテゴリーに分ける必要もないかもしれない。ただ、クラフトジン、ジャパニーズジンとして必要な要件は何かを、日本独自に決めてよいのではないかと思う。このコロナ禍にあってもジャパニーズウイスキー同様、輸出が急成長しているのが、ジャパニーズジンだ。その輸出金額は焼酎やビールを抜いて、ウイスキーに迫る勢いだ。ならば、その違いや定義について議論すべき時にきているのではないかと、思っている。

 ジンのテイスティングの後は、ウイ文研のトライアルパックのテイスティング。それぞれに30分ほどのミニ解説を加えているため、どうしても事前テイスティングが必要になる。9月からスタートして、毎月5セット。全部で15セット、75本のテイスティングは思っていた以上にシンドイ作業だ。それも30分という制約の中で喋ることは、意外と難しく、そのための準備もかなりなものとなる。まあ、言い出しっぺが自分なので仕方がないが、これも土日を使ってしかできないのがツライ。体力・気力を使い果たし、原稿を書く時間がどうしても削られてしまうからだ。

 それ以上に、日々考えて決断を下さなければならないことが天文学的にあり、その思考能力が削られるのがツライ。脳の力、脳力も体力であり、自ずと限界があるということをこの2~3年思い知らされている。それでも目の前のスケジュールは待ってくれないので、今回も次号ガロアの編集長インタビューで、山形の遊佐蒸溜所に行ってきた。コロナで空の便が減便され、しかも山形の庄内空港に飛んでいるのは全日空だけで、日に2便しかない。その午前の便で庄内に飛び、遊佐の佐藤さんの出迎えを受けて車で遊佐蒸溜所へ。3年ぶりの来訪で、社長の佐々木さんに今回はインタビュー。前回は製造スタッフの2人の女性にインタビューしたが、今回、満を持して3年物の遊佐が出るため(2022年2月)、そのことも含めて、もう一度、なぜ山形でウイスキーだったのか、なぜフォーサイスにすべてを任せたのか、そしてこの3年間で得た知見とは何だったかについて、たっぷり聞くことができた。詳細は次号のガロアを楽しみにしていてほしい。

 そのまま車で空港まで送ってもらい、5時45分のフライトで羽田に戻る。今週はTWSCのオンラインセミナー、そしてWBBCプレミアム、そして来週月・火は静岡ガイアフローと、井川蒸溜所の取材が待っている。




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「TWSCの実行委員会ミーティング」
 ウイ文研設立20周年記念のセールのパンフレットが出来あがってきて、いよいよ来週、会員に向けて発送予定である。今日発売のガロアには巻頭にジャパニーズの最新蒸留所マップを載せているが、そのリスト(55ヵ所)が完成した直後から、再び新しい蒸留所誕生のニュースが相次ぎ、次号(2022年1月12日)のガロアでは、その蒸留所もリストに加えないといけない。

 一番驚いたのが、兵庫県の北部・養父(やぶ)市に新しい蒸留所が誕生することだ。これで兵庫県は江井ヶ嶋、明石海峡、六甲山、黄桜、そしてこの養父の5ヵ所ということになる。いや、まだ発表になっていないところもあるので、それ以上か。飛騨高山にも蒸留所ができるというし、今年中に60を超える勢いだ。

 11日の木曜日には山梨県の富士吉田に蒸留所を計画しているSASAKAWAの笹川さんがウイ文研に来てくれ、来年工事が始まる富士山蒸留所の詳細について教えてくれた。細かいディテールについては述べられないが、非常に興味深い蒸留所で、間違いなく美味しいウイスキーができるだろう。何といっても、そのロケーションが素晴らしい。富士山山麓の樹林の中で、蒸留所からは富士も眺めることができるという。これも今からワクワクするような蒸留所だ。

 ということもあり、今日は6時からTWSCの実行委員会ミーティング。といっても、オンラインでのミーティングだったが、TWSCのエントリーの途中経過と、これからのスケジュールについて確認、意見聴取を行った。このままコロナが落ち着けば、オンラインではなく、以前のように集まり、ウイスキーでも飲みながら話し合いをしたかったが、まだそれには時期尚早…。昨今のジャパニーズの盛り上がりを話して、ジャパニーズに特化したイベント、特に来年の4月1日の「ジャパニーズウイスキーの日」に向けての、イベントについても話し合いをした。できれば、その日にTWSCの二次審査が行えないかとも考えている。それが実現したら、第1回以来、3年ぶりということになる。

 それやこれやで連日の取材、ミーティングで時間がまったくなく、予定していたトライアルパック第3弾のミニ講座の収録ができなかった。来週月曜(11月15日)から販売開始なので、なんとしても月曜中に5つのうちの3つまでを終わりにしないといけない。それが終われば、16日の火曜日は再び山形である…。





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「『ウイスキー完全バイブル』 と検定合格者」
 7年ぶりに、ナツメ社の『ウイスキー完全バイブル』が全面改訂版を出すことになり、春くらいからその作業に入っていたが、ようやく再校が出てきたので、今週からその校正作業に忙殺されている。300ページ近い本をすべて最初から読まなくてはならず、眼と神経をすり減らす日々が続いている。この完全バイブルは6年間で21版を発行し、総計5万部近く売れた大ヒット作だが、さすがにこの5~6年のウイスキー業界の変化は激しく、大幅に見直しを迫られることになった。ほぼ全ページ書き換えたといっていいだろう。ガロアや他の本の執筆と並行してやっていたが、ようやくゴールが見えてきた気がする。旧版にも増して多くの人に読んでもらえたらありがたいと思っている。

 ウイスキーコニサーの教本の代わりにはならないが、検定のテキストとしては十分すぎる内容で、しかもオールカラー。各ページ下にはトリビア的な情報も載せていて、これを読むだけでも楽しい。初心者にも、そして中級・上級レベルのウイスキーファンにも役に立つ本だと思っている。

 その検定の合否発表を先日行ったが、さっそく合格者の生の声が届いている。驚いたのは俳優の迫田孝也さんがウイスキーファンで、今回2級を受け、見事合格していたことだ。迫田さんがツイッターに載せているように、現在日本テレビで放送中の『真犯人フラグ』に、バーのマスター役で出演している人気俳優だ。主人公の大学時代の同級生役で、ドラマの重要な鍵を握る登場人物の一人である。他にも多くのドラマや映画にも出演しているので、ファンも多いだろう。いつか機会があれば、ガロアや検定合格者向けの『ウイスキーライフ』にも登場していただきたいと思っている。

 そういえば今回の検定では若手の女性タレントも受験しているし、拘置所の中から受験した者もいる(!)。もちろん少人数だが、海外からの受験組もいて、コニサーとは別にウイスキー人気が、多くの層に広がっていることを実感している。次回(2022年2月)は、ジャパニーズのクラフト級も新設したし、アイリッシュも現在の状況に合わせて、全面リニューアルする予定だ。

 ウイスキー文化研究所は検定やコニサー、そしてガロア、TWSCなどを通じて新たなウイスキーの飲料機会につながればと思っているのだが、そうした際に、持っていると便利なのが、テイスティングのコメントを書きこむことができる『Whisky Note』である。2019年に第1版を出して、これがその3回目、第3版となる。このノートの一番の目玉は巻末のデータ集で、毎回、スコッチ、アイリッシュ、ジャパニーズの最新蒸留所リストを載せている。さらにスコッチ、アイリッシュ、ジャパニーズ、アメリカンの各定義も載っていて、最新の各国の定義が分かるようになっている。将来的には、テイスティングだけでなく、スケジュールを書きこむカレンダーや、フリーページを設け、〝ウイスキー手帳″にしたいと思っている。

 その前にカレンダーを…。そういえば、そんな話もあったっけ。すっかり忘れていたが、スコ文研がスタートした2001年頃は、毎年のように手造りのカレンダーを作っていた。それもコピー機で。当時はプリントパックも、ラクスルもなく、すべてはコピー機印刷の手造りだった…。








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「ガロア創刊5周年記念トート」
 ガロア創刊5周年と、ウイ文研創立20周年の大セール向けに3つの新しいトートバッグを作った。創刊5周年のトートは、創刊時の版画を使った紺色のトートで、ガロアのロゴと5周年記念の文字が入っている。いつものトートより小ぶりで、ちょうどガロアが入る大きさとなっている。

 もう2つのトートはラフロイグとマッカランの黒バージョンのトートで、これは2年前のフェスで登場した黒トートの新しい物である。これで黒トートも全5種類が揃ったことになる。オンラインでの一般販売は今月中を予定しているが、ウイ文研会員向けにはもうじきパンフレットができ、それをガロアとは別にDM便で送るので、それを待って欲しい。すべて20周年記念の特別プライスとなっているからだ(セール申し込みは12月1日から)。

 思えばスコッチ文化研究所(現ウイ文研)が誕生したのは20年前の3月のことだった。設立に向けた準備が行われていたのが、ちょうど21年前の10~11月で、代表世話人が決まり、週イチペースでミーティングが続けられていた。港区南麻布の小さなビルの一室を事務所とすることを決めたのが、2001年1月のことで、2月から入居。3月に正式発足となった。

 当時、常駐スタッフは私一人で、37㎡のワンルームの事務所で、机や椅子を組みたてたのも私だった。事務機器はすべてアスクルで、パソコンも携帯も今ほど便利ではなく、すべてはアナログに頼っていた。ウイスキー市場はドン底で(ジャパニーズは2008年が底)、逆風の中での船出だったが、希望だけは持っていた。会員もスタート時は200名ほどで、2001年4月に創刊した会報誌の『スコッチ通信』は、300~400部ほどの発送だった。オールモノクロの印刷で、ページ数も12~16ページ足らず。それがやがて『ウイスキー通信』となり、そして現在は『ウイスキーガロア』となって、会員だけでなく一般書店やamazonでも売るようになっている。スタート時は季刊だった発行も、今は年6回。隔月刊で、ページ数も128~136ページと10倍近くになっている。

 通算すると100号を超えていると思うが、この20年間、一度も発行日が遅れたことがない。当たり前といえば当たり前だが、編集・発行人として、それだけが誇りでもある。〆切り、発行日を死守するというのは、業界人として最低限の務めだと思っているからだ。

 事務所は南麻布の37㎡のワンルームから、西麻布のマンション、そして現在の広尾のビルのワンフロアに移ってきた。それに伴ってスタッフも私一人から、やがて2人、3人と増え、現在では正社員11~12名を抱えるまでに成長している。もちろん事業も多岐に渡っているが、ウイ文研の〝基本のき″は会員組織である。年会費を払って、私たちの事業を支えてくれている多くの人に少しでも恩返しがしたいというのが、願いでもある。現在までに会員登録はのべにして8000名近くにのぼる。今の日本のウイスキーブームは、それら会員のおかげだと思っているし、歴史始まって以来のウイスキーブームを支えてくれたのも、全国のコアなウイスキーファン、ウイ文研会員だったと思っている。

 もちろん、やれたことは他にも沢山あったように思う。それらについては、これからの5年、10年で実現させればよい。本当なら20周年記念イベントをやりたかったが、コロナでそれどころではなくなってしまった。10周年は東日本大震災で中止、20周年はコロナ。つまりこれは、そんなことをやっているヒマがあるなら、もっと前へ向かって進めという天の声(ウイスキーには天使がいるので)なのかもしれない。まぁ、西洋的にやるなら最初の節目は25年ということなのかもしれない。









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